一言まとめ
2026年11月4日、テンセントは深圳で混元Hy4の正式版を発表した。パラメータ数は770Bで、視覚理解とコンピュータ操作(Computer Use)を初めて搭載。金融タスクのブラインド評価では3.04点でオープンソースモデル首位となり、近くモデルの重みとシステムカードを公開する予定だ。
出来事の概要
2026年11月4日、テンセント(00700.HK)は深圳で最新世代の大規模言語モデル「混元Hy4」の正式版を発表した。同社の公式プレスリリースによると、Hy4は性能と機能の両面で前世代から大きく前進し、世界をリードするオープンソースAIモデルの一角に入ったという。モデルの重み(model weights)とシステムカードは近く公開される予定である。
Hy4は、これまでHy4 Previewとして提供されていたモデルの正式版にあたる。テンセントは事前学習と事後学習の規模を拡大した。公開されたパラメータ数は7,700億(770B)である。Preview版と比べて、指示追従、長文脈理解、長期的なエージェントタスクの能力が向上し、新たに視覚理解とコンピュータ操作の2つの機能を備えた。
発表当日から、Hy4はテンセントクラウドのTokenHub、WorkBuddy、CodeBuddy、元宝(Yuanbao)、WeComのAIアシスタント「大元」、imaで利用できる。APIはOpenRouter、Hermes、OpenCodeなどのサードパーティ平台でも提供される。QQ、王者栄耀、和平精英、WeRead、テンセントニュースへの統合も進められている。
主要な情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年11月4日 |
| 発表企業 | テンセント(00700.HK) |
| モデル | 混元Hy4 正式版 |
| パラメータ数 | 770B(7,700億) |
| 新機能 | 視覚理解、コンピュータ操作(Computer Use) |
| オフィス指標 | WorkBuddy平均83.18点、通過率96.15%、中国本土12シナリオ中9で1位 |
| 金融ブラインド評価 | 金融従事者213人、実タスク579件でHy4が3.04点の首位 |
| エージェント指標 | 内部iRaBがHy4 Preview比で12.03ポイント向上 |
| 幻覚率 | Hy4 Previewの12.95%から7.2%へ低下 |
| 根拠のない仮定による誤り | 23.1%から5.6%へ低下 |
| ゲーム開発指標 | GameDevが19.1%向上、GameLogicが9.8%向上 |
| API価格 | 入力約0.90シンガポールドル/100万トークン、出力2.70米ドル/100万トークン、キャッシュ入力0.045米ドル/100万トークン |
| 期間限定优惠 | 11月4日から15日までWorkBuddyとCodeBuddyを無料化、TokenHubは2026年12月31日まで半額 |
| オープンソース計画 | 近くモデルの重みとシステムカードを公開 |
視覚理解:画像を読むから複数画像の推論へ
Hy4は初めて視覚理解を備えた。テンセントの説明によると、その範囲は細粒度の画像処理、複雑なグラフ分析、数学的な視覚推論、そして複数の画像をまたぐ一貫した推論に及ぶ。オフィス業務では、グラフ、スキャン文書、複数ページのファイルを直接読み、複数箇所の視覚情報を1つのタスクで統合できる。画像をいったんテキストに変換してから処理する方式ではない。
テンセントは、視覚能力を単独の画像エンコーダとして追加したのではなく、推論やツール呼び出しと共同で設計したと説明する。グラフを認識した後、計算ツールや検索ツールを呼び出して次の処理を進められる。視覚入力をタスク全体の流れに組み込むことが目的である。
コンピュータ操作:CLIとGUIの両方で実行
Hy4はコンピュータ操作機能を初めて導入した。コマンドラインインターフェース(CLI)とグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を操作し、アプリケーションをまたぐ業務や日常タスクを実行できる。BlenderやCADなどの専門ソフトウェアについても専用の訓練を受けており、長期的なタスクの計画と実行能力が強化された。
複数アプリにまたがる作業では、どのアプリを先に開くか、中間結果をどう受け渡すか、いつ出力を検証するかをモデル自身が判断する必要がある。テンセントは、こうした長期的なエージェントタスクを事後学習の重点と位置づけ、正式版とPreview版の差が最も大きい部分だと説明している。
オフィス、金融、ゲーム、科学研究
オフィス協業。 WorkBuddy上でHy4は平均83.18点、通過率96.15%を記録し、中国本土の12シナリオのうち9で1位となった。視覚クリエイティブ、3Dシーン構築、Web開発で効率と品質を両立し、文書プレゼン、安定性、人とAIの協業における使いやすさが改善したという。WorkBuddyとWeComの統合により、チャット、メール、文書、カレンダー、会議のデータをつなぎ、複数プロジェクトの進捗追跡、未完了タスクの特定、会議や締切の通知を行う。
金融分析。 テンセント混元チームとテンセントフィナンシャルテクノロジーは共同でブラインド評価を実施した。金融従事者213人が参加し、うち153人は外部の有力機関に属し、約70%が5年以上の業界経験を持つ。評価対象は実際の金融タスク579件である。Hy4は総合3.04点で首位、DeepSeek-V4.1-Flash-1017が2.97点、Kimi K3.1 ProとGLM-5.3がそれぞれ2.68点だった。Hy4は評価対象のオープンソースモデルの中で1位となった。
ゲーム開発。 テンセントのインタラクティブエンターテインメント事業群(IEG)のプロ開発者と協力し、Unreal Engine、Unity、Godotと深く統合した。複雑なゲームロジックとマルチプレイ実装を支援する。Hy4 Previewと比べてGameDev指標は19.1%、GameLogic指標は9.8%向上した。
科学研究。 7学科・123の実行可能タスクを評価するTenureTrailで、Hy4は数学的構築、物理モデリング、環境・地球科学、システム工学、社会経済的意思決定で高い性能を示した。テンセントはさらに、Hyra 2.0訓練フレームワークで構築した2つの基盤モデル、単一細胞表現のHyCellと物理場のHyPDEをオープンソース化した。
オープンソース、価格、安全上の制約
Hy4のAPI価格はHy4 Previewと同じである。入力が約0.90シンガポールドル/100万トークン、出力が2.70米ドル/100万トークン、キャッシュ入力が0.045米ドル/100万トークン。性能を大きく向上させながら価格を据え置いた点を、テンセントは「実用AI」の立場の一部と説明する。低コスト版のHy4 Flashも近く公開される予定だ。
オープンソースについては、近くHy4の重みとシステムカードを公開する。サイバーセキュリティとバイオセーフティを公開前の重点評価項目に挙げ、訓練データは防御的セキュリティを中心に、脆弱性の実証(PoC)と修正を含み、攻撃利用に関する資料を明示的に除外した。テンセントの玄武ラボとKeenセキュリティラボが暗号解読、バイナリ難読化解除、脆弱性悪用などを評価し、評価範囲ではHy4の攻撃的サイバー能力に重大な懸念は見つからなかった。バイオセーフティでは、基礎生物学の知識は強い一方、開放的な実験設計の能力は最先端モデルより限定的だとしている。
背景と影響
Hy4の発表は、オープンソース大規模モデルの競争を「複数能力の同時補完」の段階へ進めた。これまでのオープンソースモデルは主にテキスト推論とコード生成で競っていた。Hy4は視覚理解、コンピュータ操作、長期的エージェント能力を一度に加え、オフィス、金融、ゲーム、科学研究を重点領域に据えた。ベンダーの競争軸が単一のベンチマークから実際の業務フローへ移ったことを示している。
開発者にとって、770Bパラメータはローカル導入コストが高い。短期的にはテンセントクラウドのTokenHubやOpenRouterなど第三者平台経由のAPI利用が現実的な経路となる。無料期間とTokenHubの半額优惠は、価格と流通チャネルを通じて呼び出し量を急速に拡大する意図を示す。
ただし、結果の範囲は正確に読む必要がある。今回公開された指標の多くはテンセント内部またはテンセントが委託した評価である。金融ブラインド評価には外部専門家153人が参加したが、タスクリスト、採点基準、誤差範囲は完全には公開されていない。第三者が再現するまでは、点差をそのまま業務成果の差とみなすべきではない。
公式情報源
- テンセント公式プレスリリース(PR Newswire):Tencent Launches Hy4: Joining the Ranks of the World's Leading Open-Source AI Models
- AAP転載:Tencent Launches Hy4
- TechNode:Tencent launches Hy4 with vision and computer-use capabilities
- テンセント混元Hy4公式ページ:Hy4 Research
